あしたこそ詩をかこう
部屋でごろ寝していて、はっと気づく。
わたしには、「カントク」と呼べるひとが、いない。
今までも、そしてこれからも。
おーいかんとく、みたこともない、かんとくー
わたしはここです、 きこえますか、いつも腕組みしてばっか、
こちらにも手を、振り返してください
おーい、と今、呼びかけることのできるひとを超えてわたしはただひとりの
*****
かんとくー
にっぽんいちの
かんとくー
*****
わたしにはだれのことばも(だれのことばもわたしには)
三行以上ひびかないから
あんかけ
とろとろ
ぴくるす
そして
かんとく。
今の今
たとへば、君。
ぼくが忙しいときほど困らせようとして、ちょっと面倒なメールをしたり、感傷的になってしまうきみ。たとへばぼく。
たとへば僕。
間違えて以前の恋人の名前で読んでしまっても、ハハッって笑って気にしないふりをするぼく。たとへばきみ。
たとへば君。
今でしょ!っていつからいつが今なの?昨日は今じゃないの?明日は今なの?
たとへば、僕。
今どきのオシャレがわからない。
たとへば、君。
たとへば僕ガサッと落ち葉をすくふやうに君をさらつて行けぬから、
たとへば君サラッと涙を流すやうに僕をさらつて行つてはくれぬか
じしんがない
自転車のタイヤの空気が着々と減っている。空気を入れなくてはならないのだけれど、いつどこで入れればいいかがわからない。いや、近所の自転車屋さんの場所はもちろん把握しているのだけれど、いいタイミングがわからなくて、あと空気を入れるのにお金がかかるのが怖くて、行くことができない。でもこのままだと取り返しのつかないことになってしまう。
取り返しの、つかない、こと。
今日、壁に自分の頭をコツ、コツと打ち付ける少年に会った。
「お母さんに叱られた」らしい。来週会ったら褒めてあげよう。君はすごいのだ、と。壁に頭をコツコツしなくてはならないようなことは何もないのだ、と。
何年か前の自分はちょくちょく部屋の壁に頭をコツコツぶつけていた。軽くしか当てていないのに結構痛い。自分を痛めつけて反省したふりをさせるにはちょうどよいのだ。
みんなが帰った後、一人で少し、叫んだ。
ごーふる
土日の午前中は布団の中で過ごしてばかり。今日は一歩も家から出なかった。昨日は買い物に出た30分だけだ。困った。
かりんとうを朝からぼりぼり食べる。
小学校や中学校や高校のころは、近くを走っていたのに、いつのまにかぐんぐん私の前を行っている人達がいる。もはや周回遅れだ。一周、二週。何回も抜かされている気がする。最近まで「ゴールまで一緒に走ろうね」って約束してたのに、給水所でトイレに行っている間に、いつのまにか置いてきぼりだ。ああ無情。
一ヶ月後、半年後、一年後、五年後が怖くてしょうがない。何してるかしらん。
自分が何歳だったか忘れてしまった!23か?24か?わからないのです。
かりんとうをぼりぼり食べよう。
野菜かりんとう、おこのみかりんとう。
まあ何周遅れたっていいか。
みんなそれぞれすきな木馬に乗れたらいいのに
今まで気になるひとはたくさんいたけど誰かにゼロから好きになってもらったことはおそらくない、というのもまずわたしが相手を異性としてぎんぎんに意識してしまうから、なのだろうな。ここで顔、という原因はさておき。
だけどかつてひとりだけ、わたしを好きでたまらないマー君という男の子がいたのだけどマー君には、わたしに対する溢れる愛しさゆえか、会うとわたしの腕に噛みついてしまうというどうしても歓迎できないところがあってわたしはついにマー君の愛に応えることはできなかった。
きっとみんな、わたしを好きになると愛しさのあまり腕に噛みついてしまうんじゃないかと思ってその前に、ちゃんと危険を回避するんだね。
マー君にとって今でもわたしは初恋のひとだろうか。今でもメロンソーダ飲むわたしを笑ったりしないだろうか。
その前にマー君はちゃんとヤンキーだろうか。
はしゃいでもかまわないけどまたがった木馬の顔を見てはいけない/穂村弘
しっとりして下さい
あなたがいちばんいいと思う詩を切りとつて刻んで畳んで刻みつけて刻みつけてすべて刻みつけて刻みつけて焼け焦げた
声がするのは
嗤嗤嗤
すごくいいと思うよ、わたしすごくこれいいと思う
だからもっとあなた、
しっとりして下さい
ドーナツは置いといて
友だちを大切にして
友だちのひとりを大切にして
砂場で山を、作り上げたらすぐに目の前で踏みつぶしてなかったことにして
そうしていつも、そばに置いて
友だちのひとりを大切にして