きのうはたくさん雨が降ったね

「ねえ、かえるさん。」「かえるくん。」と、かえるくんは指を一本立てて訂正した。「ねえ、かえるくん、きのうはたくさん雨が降ったね。いろんなものが流されてしまったね。」

2013-01-01から1年間の記事一覧

犬のたまごをあげよう

拝啓 紅葉が見頃の季節になりました。なぜ木々は秋になると紅葉になるか知っていますか。わたしは知りません。 それはさておき。 今日はあなたの何度目かの誕生日ですね。 プレゼントに犬のたまごをあげましょう。この手紙に同封します。 え、猫のたまごのほ…

しんじゅくでマシュマロ焦がす

やめてやらー、やめてやらー、「紙コップ」で「未来」つくることなんて、やめてやらー。「オープンマインド」も「つり革に手をふれない」もぜんぶやめてやらー。まばたきだけしていきていこうね。かつ、さまざまな<はなうた>はしんじて、いきていこうね。

なにしてもつまんないね

クッション抱えてうわめづかいでわたしぶどうひきちぎっておなじいえの中でおなじ色のぬいぐるみならべたままかお見てなまえを呼び合いたいなおまえ、かお、め、ひかってるものがたり必要だったね昨日白いひかりだけ見えないね鯛のほねぶっ刺したいなプルタ…

ワタリウムにて

唇をよこからのぞめばうるわしきかな赤々どくどくとハートになるひとの、あたまをひとつずつ本の角でこつんとやりたい。 (そのなかのひとりの本のカバーに描かれた二匹のカッパのいつか、かわいた皿をひとつずつ、こつんとやりたい) 木を見て森を見ずとい…

夕焼けにゃんにゃん

今日地元の駅に着いたときに見た夕焼けは、どん引きするほどにきれいだった。 先週見た雨上がりの大きなおおきな虹も、どん引きするほどきれいだった。 なぜきれいなものを見るとどん引きしてしまうのだろう。 このどん引きを人に伝えたくて、メール画面を開…

リボン

あさの四ツ谷で片膝ついて転んだけれどかなしいかなみなつめたい一瞥くれるだけ、片膝ついたまま立ち上がるまで妙な間を設けてしまつたから呼吸ひとつふたつおいてから立ち上がる、はいはい女子はなべてリボンモチーフの好きなことよかったねばんざーい、と…

こわかったことその1その2

最近こわかったことその1。授業中の教室におおきな蛾が飛んでいて、飛んでいるだけなら構わないけどわたしめがけて飛んできて、蛾の、アップがこわかった。 最近こわかったことその2。先週食堂の券売機の前で、男子学生が友人(男)に 「ケトル買えよ」っ…

タクトを折ろう

きのうは高校の後輩の演奏を聴きに行って、とても上手でそれはとてもいい時間だったのだけどちょっとしたお芝居やオーケストラを聴きに、つまり舞台に立つひとをみに行くたびに、わたしは舞台が無防備であることにひどくどきどきする。 あんなんじゃ、つかつ…

しゅーまんのまゆげも

抜けたまゆげがすごーく長くてびっくりした。 こんな長いまゆげをつけたまま歩いたりわらったりしていたのだ さながらおじいさん おじいさんのまゆげ及び耳毛?はどうしてあんなに長いのかと 電車で乗り合わせるおじいさんのそれをいつも見ている 年をとると…

あしたこそ詩をかこう

部屋でごろ寝していて、はっと気づく。 わたしには、「カントク」と呼べるひとが、いない。 今までも、そしてこれからも。 おーいかんとく、みたこともない、かんとくー わたしはここです、 きこえますか、いつも腕組みしてばっか、 こちらにも手を、振り返…

今の今

たとへば、君。 ぼくが忙しいときほど困らせようとして、ちょっと面倒なメールをしたり、感傷的になってしまうきみ。たとへばぼく。 たとへば僕。 間違えて以前の恋人の名前で読んでしまっても、ハハッって笑って気にしないふりをするぼく。たとへばきみ。 …

じしんがない

自転車のタイヤの空気が着々と減っている。空気を入れなくてはならないのだけれど、いつどこで入れればいいかがわからない。いや、近所の自転車屋さんの場所はもちろん把握しているのだけれど、いいタイミングがわからなくて、あと空気を入れるのにお金がか…

ごーふる

土日の午前中は布団の中で過ごしてばかり。今日は一歩も家から出なかった。昨日は買い物に出た30分だけだ。困った。 かりんとうを朝からぼりぼり食べる。 小学校や中学校や高校のころは、近くを走っていたのに、いつのまにかぐんぐん私の前を行っている人…

みんなそれぞれすきな木馬に乗れたらいいのに

今まで気になるひとはたくさんいたけど誰かにゼロから好きになってもらったことはおそらくない、というのもまずわたしが相手を異性としてぎんぎんに意識してしまうから、なのだろうな。ここで顔、という原因はさておき。 だけどかつてひとりだけ、わたしを好…

しっとりして下さい

あなたがいちばんいいと思う詩を切りとつて刻んで畳んで刻みつけて刻みつけてすべて刻みつけて刻みつけて焼け焦げた 声がするのは 嗤嗤嗤 すごくいいと思うよ、わたしすごくこれいいと思う だからもっとあなた、 しっとりして下さい

ドーナツは置いといて

友だちを大切にして 友だちのひとりを大切にして 砂場で山を、作り上げたらすぐに目の前で踏みつぶしてなかったことにして そうしていつも、そばに置いて 友だちのひとりを大切にして

インタビューをする

仙台に、行ってきた。 仙台の人たちが、被災者のかたがたに向けて祈っているということが印象的だった。仙台は被災地であり、かつ被災地ではなかった。 大きな夢もないし、日々を怠惰にすごすし、人ともうまく仲良くできないわたしにも伝わることばで、 いん…

規格外

牛乳なんて好きではないままこんなにぐんぐん大きくなってしまつたけれど唐突に、飲みたくなっていま、こうして飲み干したグラスの半透明を見ていると、どこからか健全な熱、のようなものが起こつてあとは布団の中で朝を迎えるだけの身体をどうにも持て余し…

いつもかわいい―二月かばん歌会―

はじめて実際にお会いしたひとびとはみな短歌、短歌をつくるひと、歌人だった。表現のかたちはさまざまあって、たとえば小説のそのひろがりは、長さにおいて無限、詩は行分けをとることによってそこに作者の息づかいが生れわたしはそのつらなりに呼吸をあわ…

あそびにおいでよ

はじめて西武池袋線に乗って、目につくのは座席の色とたくさんのひとの歯ぐき。 としまえん 凡てのごみ箱からさがすたったひとつのひかるスイッチ

脱出

小学校3年生の学芸会の劇は僕の第一声で始まるのでした。その一言が大きな声で言えるかということが(大人たちにとって)とても重要だったのでその言葉を大きな声で言えるかどうかのオーディションがありました。晴れてそのオーディションを勝ち抜いた僕は…

女の子

なんにもないのにかなしいと、はじめて全身で感じたのは五歳のとき海老茶色の床のお教室でほかの友だちとペンでお絵かきをしているとき、わたしが描いたうさぎははだいろ一色でみんなに見られないようにうさぎの部分だけちぎってずっとポケットに入れていた…

ほこら

帰り途、前田さんちの門灯に寄せられて、ひかりにおでこをつけたらまなうらでとても、明るかった。 けんじも知らないゆうまも知らないたくやも知らないわたしは明日みどりの窓口にゆこう。 「ほかのなにものでもないということを祠のなかではひみつにしてる」

石緑

黒鍵のいつまでも探し当てられぬアコーディオン弾きを森に残して 窯のなかのひつじのことをうやむやにして ブーツのかかとを切り落として 犬より劣る鳴き真似をして 毎日あなたの 靴ひもの心配をしています 天井のあまたの電灯は瞬きごとにふたつに分裂して…

おりたたまれて

たくさんの本をもとの本棚に戻してはまた、繰り返し身体の規則正しい運動にはなはだ困憊しきり綿のような身体で涙線のかくもゆるむのは、 このごろまれのことでそれもただ身体をのみ酷使した場にはさだまらぬ情緒すら浮かばぬ落涙のある、 深く息を吸い込ん…

神社なのにだれもいない

今朝道路脇でショッキングピンクの「つの」を拾った。「つの」は弾力があってすこし、湿っている。むかしつるバラの、棘を折って唾をつけ鼻のあたまに乗せていた要領でショッキングピンクの「つの」を鼻のあたまに乗せて少し歩く。 登校中の子どもの声に「こ…

ほつかいどうはいまもさむい

四歳のときだったか五歳のときだったか、まだ道路脇に堆くゆきの残るきせつ、母と駅前の横断歩道で信号をまっていた、わたしはそのときのかぎりの淫靡なことばを発そうと、それで母に「おんち」とはつきりと一音一音区切つてそう云ったのだった。 母は眼をま…

大きなホテルが閉店しました

ふゆの陽にさらされ確実にうすく軽く小さくたよりなく、なってゆく洗濯ものを ゆつくりと畳む一日をおもつて 少女の眸のふるえを捉えたいつしゅんのあなたの瞼眼にも いつとはしれずふゆの日にゆつくりと、深呼吸するいつしゅんをうつして そうして終点の、…

あざみ野のライオン

午後、大きな道路沿いを歩いていたら、ライオンが前からやってくる。 ライオンだライオンだライオンだ、と息を止めながらはや足で、ライオンの前を通り過ぎる。わたしのちょっと後ろを歩いていた友人も、ライオンだったね、と言っていたのでやっぱりあれはラ…

たこはたこ焼きの中におさまり、イカはジェット噴射で空を飛ぶ

パーソナルスペースの大きさは人それぞれです パーソナルスペースは一人の人の中でも時と場合によって大きさが変わります パーソナルスペースを侵さないようにしよう パーソナルスペースを侵さないようにしよう 倉田百三は、非常に優秀な学生だったのに、独…