きのうはたくさん雨が降ったね

「ねえ、かえるさん。」「かえるくん。」と、かえるくんは指を一本立てて訂正した。「ねえ、かえるくん、きのうはたくさん雨が降ったね。いろんなものが流されてしまったね。」

小銭の全国行脚

部屋で緑茶を煎れて飲みながら、かりんとうをぼりぼり食べている。

 

これを書いているノートパソコンが載っている机の傍らには、10円玉が20枚以上置かれている。50円玉が2枚くらい、1円玉も3枚くらいある。最近、お財布ケータイという新機能が便利なので、そればかりに頼ってしまって、たまの機会に大きなお金で支払った時のおつりが手持ち無沙汰で財布には入らずそのまま机の上にばらまかれるのだ。

 

全部集めれば牛丼一杯分くらいになる小銭たち。

 

何年も(ときに何十年も)前に造られて、日本国内のあちこちを流通して回ってきて、人の喜びも哀しみも共にしてきた小銭たち。まだ生まれたばかりの赤ちゃん小銭もいるだろうし、思春期小銭や、遊び盛り小銭や、おませさん小銭、部活熱中小銭、引きこもり小銭だっているだろう。中には古株の、小銭たちをまとめるリーダー格の小銭もいるだろう。一枚一枚にドラマがあるのだ。

 

その小銭たちの全国行脚もこのままでは我が家の机の隅っこで終わってしまう。どうしたものか。

 

かりんとうをぼりぼり食べながらうなる。

 

外からは雪かきの音が聞こえる。