みんなそれぞれすきな木馬に乗れたらいいのに
今まで気になるひとはたくさんいたけど誰かにゼロから好きになってもらったことはおそらくない、というのもまずわたしが相手を異性としてぎんぎんに意識してしまうから、なのだろうな。ここで顔、という原因はさておき。
だけどかつてひとりだけ、わたしを好きでたまらないマー君という男の子がいたのだけどマー君には、わたしに対する溢れる愛しさゆえか、会うとわたしの腕に噛みついてしまうというどうしても歓迎できないところがあってわたしはついにマー君の愛に応えることはできなかった。
きっとみんな、わたしを好きになると愛しさのあまり腕に噛みついてしまうんじゃないかと思ってその前に、ちゃんと危険を回避するんだね。
マー君にとって今でもわたしは初恋のひとだろうか。今でもメロンソーダ飲むわたしを笑ったりしないだろうか。
その前にマー君はちゃんとヤンキーだろうか。
はしゃいでもかまわないけどまたがった木馬の顔を見てはいけない/穂村弘