石緑
黒鍵のいつまでも探し当てられぬアコーディオン弾きを森に残して
窯のなかのひつじのことをうやむやにして
ブーツのかかとを切り落として
犬より劣る鳴き真似をして
毎日あなたの
靴ひもの心配をしています
天井のあまたの電灯は瞬きごとにふたつに分裂していつか誰かと見た回転する
ほしを
あなたの眼前につきつけてやる
そうかそうやって
最後に残るのはあくび
ほかのだれとも重なるあなたのため息
ねこのしっぽをとなりの犬の舌と結んで
となりの犬の舌と読みかけの新顎十郎捕物帳2の栞をきつく結んで
そうしてあなたの舌に
辿りつくまでわたしは製氷機に自分の舌を
つけたまんまで待っていますね