きのうはたくさん雨が降ったね

「ねえ、かえるさん。」「かえるくん。」と、かえるくんは指を一本立てて訂正した。「ねえ、かえるくん、きのうはたくさん雨が降ったね。いろんなものが流されてしまったね。」

さういふふうであれ

きついスケート靴を履いて(靴ひもに、苦戦した)わたしは氷上に二本の細く鋭い刃を立てて、スケートをしている。わたしはスケートをこれまでにしたことがあったか、スケート、アイスの上を優雅に滑る遊びしかし、なんとも寒そうである。冬の、遊びである。

そんなスケートを、しんじつ所在なく、今わたしはしている。

しかし、立っているだけではスケートをしているとは云い難い。スケートとは、滑ること、優雅に氷上を滑ること、ときにはターンなどしてみて、また後ろ向きのまま滑ったりしてみて滑ること、だがわたしはそれができない。ではどうしてわたしはこんなところにいるのだろうか。そういえばここは学校だ、わたしは今、学校の敷地内でスケートをしている、解せぬ。ここにはたしか、教会があったような、気がする。

 教会はどこにもない、木々に囲まれたこの広い敷地は、一面真っ白な氷だ。わたしはここにひとりで立っているのではなく友人に、連れられてきた、友人はそういえばどこに行ったのか。先ほどわたしに箒を一本渡し、去ってしまった。そういうわけでわたしは今、箒を持って、氷上に立っている。 箒ーー何を掃けばいいのだろう、わからないまま、立っている。

 よくよく氷を見てみると、うっすらとタイルのような升目がある、一メートル四方のタイルが、敷き詰められているような、これは氷である。そのタイルとタイルの隙間には何やら落ち葉など、挟まっている、これを掃けばいいのだろうか。しかし掃き集めたところで、ちりとりがない。ちりとりがなければまとめて落ち葉を捨てることができない、あるいは友人は、ちりとりを取りにいったのかもしれない、それならば友人の戻るまで落ち葉を集めていればいい。

 わたしは暗い部屋のなかにいる、箒など、持っていない、氷の上になど、立っていない。